Movidius NCSをTinker Boardから使う

Movidius NCSはRaspberry Pi (以下、RasPi)にも対応しています。RasPiのアーキテクチャはarmhf、OSはDebianベースのRaspbianです。どこかに似たような環境がありませんでしたか? そう、ASUS Tinker Boardです。Tinker Boardもarmhfアーキテクチャ、DebianベースのTinker OSで動作します。これはTinker Boardで動かしてみる価値がありそうです。

ということで試行錯誤してみた結果、動作させることができましたので情報を整理しておきます。キーポイントは

  • TinkerOSのPython3.5.3は互換性がなくNG
  • python3-setuptools, python3-wheelを事前に手動インストール
  • armhf向けの再配布用debパッケージを手動インストール

あたりです。

※注) 以下の方法はTinker Board上でMovidius NCSが安定して動作することを保証するものではありませんのでご注意下さい。

Tinker Boardはセットアップ済みとします。まずはapt lineを編集してベースをStretch (stable)からBuster (testing)へ変更し、システムを更新します。

$ sudo vi /etc/apt/sources.list
deb http://http.debian.net/debian/ testing main contrib non-free
#deb-src http://http.debian.net/debian/ stretch main contrib non-free
deb http://security.debian.org/ testing/updates main contrib non-free
#deb-src http://security.debian.org/ stretch/updates main contrib non-free
deb http://http.debian.net/debian/ buster-updates main contrib non-free
#deb-src http://http.debian.net/debian/ stretch-updates main contrib non-free

$ sudo apt update
$ sudo apt upgrade
$ sudo apt clean

src行もコメントアウトしてあります。おそらくaptコマンドで -t オプション指定してpython3だけtestingにすれば問題はないと思いますが、私は普段使いの環境もtestingなのでここではシステム全体をtestingにしています。この後に、

$ sudo apt install python3-setuptools python3-wheel

しておきます。この二つがインストールされていないと、SDKのインストール時にエラーになったりします (wheelの方はインストールしなくても大丈夫なようですが念の為)。

システムの更新が済んだら、SDKをインストールしていきます。まずはToolkitから。こちらはUbuntu環境と同様に展開してbin/setup.shを実行すればOKですが、だいぶ時間が掛かります。CPUをぶん回すためか、Tinker Boardもだいぶ熱くなりますのでご注意を。

次にAPIのインストールですが、その前にarmhf向けの再配布用debパッケージをインストールします。APIのtar.gzを展開したncapi/redist直下にもdebパッケージファイルがありますが、ここではさらにその下のpi_jessieディレクトリ以下にあるdebパッケージをインストールします。

$ sudo dpkg -i ncapi/redist/pi_jessie/*_armhf.deb

なお、ncapi/redist直下のpython3-mvncパッケージはpython3.5用、pi_jessie以下にある同名のパッケージはpython3.4用のようです。TinkerOSはpython3.5なので、pi_jessie以下のパッケージはインストールする必要はありません (all = 全アーキテクチャ向けなので前者で問題ありません)。

一旦ターミナルを開き直してToolkitが設定した環境変数を反映させてからAPIをインストールします。debパッケージをインストールしたら、ncapi/setup.shでAPIをインストールします。caffeモデルのDLにはしばらく時間が掛かりますが、その後のコンパイルはすぐ済みます。

最後にbin/data/dlnets.shを実行してcaffeのネットワークモデルをDLしたら、さっそくMovidius NCSをTinker Boardに挿してみましょう。OSの再起動は不要でした。

$ sudo dmesg | grep MA2X5X
[...] usb 1-1.4: Product: Movidius MA2X5X

OSから認識されているようですので、example00〜03を実行してみましょう。

$ cd ~/workspace/mvncsdk/bin/
$ make example00
$ make example01
$ make example02
$ make example03

エラー等も発生せず、問題なく実行できるかと思います。

Movidius NCSをセットアップする

Movidius NCS
Movidius Neural Compute Stick

intelに買収されたMovidius社から、USB接続型の機械学習(ディープラーニング)用アクセラレータ、Movidius Neural Compute Stick (以下、Movidius NCS)が発売されました。RSコンポーネンツMouserから入手できますが、現時点では在庫切れのようです。初期の入荷数が少なかったようですが無事に入手できましたので、環境をセットアップしてみました。

推奨環境はネイティブなUbuntu 16.04 amd64ですが、そんなに都合よく環境は用意できませんので、WIndows 7上のVMWare 12にUbuntuをインストールしました。

※注) 以下の方法はVMWare上のUbuntuでMovidius NCSが安定して動作することを保証するものではありませんのでご注意下さい。

Ubuntuのインストールが完了したらログインし、Movidius NCS SDKをセットアップします。手順はGetting Startedに書かれている通りに進めれば何の問題もありません。マシンパワーやネットワークの速度によっては、pythonモジュールのインストールやcaffeモデルのDL等に時間が掛かることがあります。

引っ掛かる可能性のあるポイントは、SDKのToolkitインストール後に環境変数を反映させるためにログアウト(あるいはターミナル等の立ち上げ直し)が必要なことです。これをせずにAPIをセットアップしようとすると失敗します。

SDK (ToolkitとAPI)のセットアップが完了したら、PCにMovidius NCSをUSBポートに差し込んでみましょう。認識されたかどうか確認してみます。

$ sudo dmesg | grep MA2
[...] usb 3-2: Product: Movidius MA2X5X

こんな感じの文字列が出力されれば認識されてるのでOK、と言いたいところなのですが、udevを使ってデバイスファイルのパーミッションを設定したりしているようなので、Ubuntuを一度再起動した方が確実かも知れません。

認識されない場合、VMWareのリムーバブルデバイスの設定でMovidius NCSが仮想マシンに接続されているか確認して下さい。接続されていない場合は接続して上記の手順で再度確認してみて下さい。

Movidius NCSが認識されていることを確認できたら、動作確認してみましょう。Getting Startedにもあるように、

$ cd ~/workspace/mvncsdk/bin
$ make example00
$ make example01
$ make example02
$ make example03

のexample00から03までを動かしてみて下さい。うまくいけばMovidiusを動作させることができます。私のVMWare環境では動作したりしなかったりで、記事執筆時点では安定して動作させることができていません。

追記: ネイティブなDebian testing (buster) amd64はサポート外ですが安定して動作することを確認しました。VMWareやVirtualBox上で動作させるのは必要以上に労力が必要となりますので、ネイティブ環境を用意されることをお奨めします。